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“The Art of Construction Leadership” 工事組織について

“The Art of Construction Leadership” 工事組織について

The Art of Construction Leadership|

なぜ、弊社は複数人で一つの現場を管理する工事組織なのか?

序文:「建設業は、組織の力が問われる産業である」

さいたま市で電気・空調工事に携わってきた私が、この業界で最も強く感じることがあります。

それは、**「建設業ほど外注も含めて『組織の力』が問われる産業はない」**ということです。

私たちの建設業では、どれだけ優秀な技術者1人がいても、その人が3つ、4つの現場を同時に管理していたら、必ずどこかで人間の限界に達する。そして、その限界を越えたとき、施工現場では「ミス」が生まれる。

三洋電設が、多種多様な現場の中で施工ミスを最小限に抑え、発生したミスに素早く対応できている理由は、決して「弊社の担当者、現場の職人さんが完璧だから」ではない。むしろ、**「ミスが起きやすい環境を改善し、万が一ミスが起きたときに即座に対応できるような『組織体制』を作っているから」**です。

そして、その組織体制は、私が経営者になってから、意識的に導入し、日々研鑽している独自システムなのです。

今回のコラムでは、建設業における「組織の本質」について、私の実際の経営経験から考えたことを記載したいと思います!


1. 建設業が抱える、根本的な課題:「人間は複数の仕事を完璧にはこなせない」

オリジナルな組織体制が生まれた理由

日本の建設業界では、ここ30年ほど、**「1人の施工管理者が3~4つの現場を同時に管理する」**という体制が「常」になっています。

この体制が生まれた背景は個人的憶測の中では明確で、バブル期(1980年代後半)、建設需要が急増したとき、「人手が足りない」という危機的状況の中で、「一人の優秀な人間にできるだけ多くの現場を任せよう」という発想が生まれたのです。

その当時は、それしか方策が無かったのかもしれません。工事量が多く、工期が短く、「とにかく完成させる」ことが最優先だった時代です。デベロッパーや経営者など、権力を持つ人間が労働者を搾取していたという表現を書籍では読んだこともあります。

しかし、いま2026年の時点でも、この体制を続けている建設会社は存在しており、大切なコトに気づいていない。

それは、**「効率性と品質は、ある地点を超えたら対立する」**という事実です。

「認知負荷」という、隠れた病

認知心理学に、「認知負荷」という概念があります。

簡単に言うと、**「人間の脳が同時に処理できる情報量には限界がある」**ということです。スポーツ科学でも聞く話なのですが、マルチタスクは人間には不向きです。

1人の施工管理者が現場Aで配線計画を立てながら、現場Bでは既設設備の確認をし、現場Cではトラブル対応をしている——この状態では、その人の脳は完全にオーバーロードしています。

通常、認知心理学では、複雑なタスクは最大3つが限界とされています。それ以上になると、「判断の質」が急速に低下する。

建設業では、その「判断の質の低下」が、そのまま「施工ミス」に繋がります。


2. 経営者になってから始めた、「全員施工・全員管理」体制

転換点:ミスから学んだこと

1975年に会社を父が立ち上げた当初から少数の施工管理者に複数の現場を任せていました。

しかし、私が会社を引き継ぐ前に、ある「気づき」が私の中にありました。

施工現場で何度かミスが見つかる時に、「なぜこんなミスが起きたのか?」と考えても責任の所存が曖昧になる時が度々あり、ある時点で、私は自分の問い方が間違っていたことに気づきました。

「ミスを起こした人が悪いのではなく、その人がミスを起こさざるを得ない『環境』を作ってしまう経営手法が悪いのではないか」

「ミスの原因は『人間の不注意』ではなく『システムの限界にある』ということ。」

そして、経営者として、改善が必要だと感じました。


野球やサッカーと同じ組織哲学:「全員施工・全員管理」

そこで、私が採用することに決めたのが、**「野球やサッカーと同じ組織モデル」**です。

野球を考えてみると、試合では、9人全員が同時にプレーします。守備位置は決まっていますが、全員が試合の勝敗に関わっており、責任を持っています。もしピッチャーだけが頑張っても、ほかが手を抜いていたら試合には勝てません。

サッカーも同じ。フォーメーションはありますが、全員が攻撃にも守備にも参加します。その瞬間瞬間で、全員が「今、自分たちは何をすべきか」を判断し、行動しています。

共通項なのは、「ボールが来る前に起こす行動=戦略、技術、そして組織論」

建設現場も、これと同じであるべきです。

つまり、三洋電設の組織体制は、以下のようなものです:

従来の体制:
施工管理者A → 現場X, Y, Z を管理

三洋電設の新体制:
一つの現場 ← 複数の施工管理者+職人たちの全員が関わり、全員で施工品質を管理する

「全員施工・全員管理」が意味すること

この体制を採用してから、組織文化が劇的に変わりました。

    • 複数の施工管理者と職人が、同じ現場で同じ責任を共有する
    • 全員が「この現場の品質は、自分たちの責任」という認識を持つ
    • ベテランと若手が常に一緒にいるため、技術と判断力が継承される
    • ミスが起きたとき、「誰かの責任」ではなく「チーム全体で何が改善できるか」という学習が起きる

    これは、野球やサッカーで全員が試合に参加し責任を持つのと、全く同じ心理です。


    3. 「生産性」という幻想を打破する

    これは、**「生産性という指標は、建設業では本来、適切な評価軸ではない」**ということです。

    なぜ、生産性偏重がもたらされたのか

    1990年代から2000年代初頭にかけて、日本の経営学は「生産性」という概念に支配されました。

    製造業での成功例(トヨタのジャスト・イン・タイムなど)が、あたかも「すべての産業に適用できる万能の真理」のように語られました。戦後の日本は製造業をお手本に生活基準を作り上げたという何かで読んだ気がしています。

    学校教育の始業から終業までの流れもそれに似ているのが日本文化であると書いてあったと記憶しています。

    結果として、建設業も「いかに少ない人数で、多くの工事をこなすか」という生産性優位の指標で、自らの組織を評価するようになったのだと思われます。

    そして、これは現在でも売上げや社員数を建設業者の指標として捉える評価基準として日本社会に蔓延っています。


    経営者としての決断:「複数人管理」へのシフト

    複数人で一つの現場を管理することは、確実に「表面的な生産性」を低下させます。

    しかし、経営者として私が判断したのは、その「生産性低下」の代わりに、私たちが得られるものが、はるかに大きいということです。

    それは、『施主の信頼』という、金銭化不可能だけど最も価値の高い信頼という資産。

    さいたま市で、この「複数人管理体制」を導入してから、私たちが受け継いできた評判は、「一度は頼むと、二度、三度と頼んでくださる施主様が多い」という形で現れています。

    そして、さいたま市の主要な企業様が支持してくれています!!本当にありがとうございます!!

    その背景にあるのが、「複数人管理による高い品質確保と、最小化されたミス発生時の素早い対応」なのです。


    4. 「リーダーシップ」とは何か

    最後に、このコラムのテーマに戻ると。。。

    「The Art of Construction Leadership」——工事組織の本質とは何か?

    私たちの多くは「リーダーシップ」を、「スタッフを動かす能力」だと思っています。しかし、本来のリーダーシップは、もっと根本的なところにある気がしています。

    それは、**「その組織が何を大切にするのかを、自らが身をもって示し、行動すること」**かなと。

    弊社が「複数人管理体制」を採用し、それを貫き続けているのは、「弊社の仕事の本質が『品質』である」という、経営思想の表現方法のひとつです。

    そして、その判断は、私が経営者として、意識的に選択したコトです。

    毎朝8:15からスタッフみんなと会社を綺麗に掃除するのも、私の経営スタイルの1つです。


    5. 「複数人管理体制」が生む、見えない価値

    経営者として、この体制を導入してから、組織の中で何が変わったのか?

    複数人で現場に赴くことで、ベテランと若手が常に一緒に仕事をします。

    これにより、「技術」が継承されるだけでなく、「ものづくりに対する心構え」が体で学べるようになります。

    ベテランが「ここは手を抜いちゃダメだ」という判断をする理由、「ここはこう仕上げることが、後のメンテナンス性を高める」という工夫——こうしたことは、言葉では教えられません。現場で、何度も一緒に経験することで、初めて理解できるのです。

    組織全体での「品質基準」の統一

    複数人管理が定着すると、組織全体に「どの現場でも同じ品質基準を保つ」という文化が生まれます。

    これは、経営者が何度「品質を大切にしろ」と言うよりも、よほど効果的です。「複数人で検討する」というシステム自体が、品質へのこだわりを表現しているからです。

    施主様(オーナー)との関係の質が変わる

    複数人が現場に出ることで、オーナーは複数の視点からの提案を受け取ります。

    「施工管理者Aの視点」「現場責任者Bの視点」から、異なるアドバイスが得られる。これは、オーナーにとって、より信頼できる決定を助けます。

    また、「複数人が対応してくれる」という事実自体が、オーナーに「この会社は、うちの工事を本気で取り組んでくれている」というメッセージを伝えるのです。これは、とても美しい光景です。


    まとめ:「リーダーシップの本質は、『何を優先するか』の選択である」

    「The Art of Construction Leadership」というテーマで考えたとき、私が最も大切だと思うのは:

    経営者の『選択』が、全社員にメッセージとなるということです。

    「生産性を優先する」と選べば、スタッフたちは「効率的に仕事をこなすこと」を目指すようになります。

    「品質を優先する」と選べば、スタッフたちは「完璧に近い仕事をすること」を目指すようになります。

    三洋電設が「複数人管理体制」を採用し、それを今続けているコトは、「この仕事の本質は『品質』である」という、経営思想を、組織体制という形で表現することです。

    「品質を確保することで、結果的に全体の効率性が高まる」——これが、本当の品質なのです。

    それは、野球やサッカーのように、全員が試合(現場)に関わり、責任を持つというモデルと同じであると確信しています。

     

    次のリノベーションの現場を3人で視察しました。

    オーナーさんの笑顔を楽しみに、全員施工で挑みます!!

     

    三洋電設株式会社

    代表取締役 早稲田 力也

     

     

     

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